2021/10/28
ストリートピアノ、多様性、見守るということ
10月17日は桑名市初のストリートピアノでした。
桑名市寺町通り商店街の皆様、五大茶屋のオーナー様、サポートくださっていた中村純子様、
素敵な演奏を披露してくださった皆様、拍手を贈ってくださった通りすがりの観客の皆様、
ありがとうございました!!
当日朝10時スタートということで、生徒さんも私も10時待ち合わせで現地集合したのですが、
とても盛況でびっくりしました。コロナ対策ということもあり、出演者の連絡先をひとりひとり聴き取り、
密を避け、ひとりごとに手にも鍵盤にも消毒を行う厳戒態勢のなか、
堂々のストリートピアノデビューとなったA君、本当にしっかりしてきたね!
君の弾いてくれたゴジラに感動しました!
ちょっぴり照れが出たのかいつもに比べると音少なめの控えめな弾き方になっていたけれど、
着実に成長しているのを感じました。
A君は、発達障害グレーゾーンの生徒さんです。
特性から同時に二つのことをするのが苦手で、最初は楽譜のドを見ることをとても嫌がりました。
じっとしていられず椅子から離れたり、しばしば部屋から脱走したり、鉛筆を延々と削り出して鉛筆がなくなるんじゃないかとハラハラさせたり、
庭の猫ちゃんに煮干しをあげると言って自分がもぐもぐ食べたり(笑)、五線ノートはA君の好きなはたらく乗り物のシールだらけになりました(大笑)。
ピアノを弾くということは、聴覚から入る音を、『ド』という音であると認識し、ましてやそれを楽譜の上の記号であるドに結び付ける。
目と、手と、耳を連動させ、頭でも音符という記号を解読していくのですから、それは同時作業の苦手なA君にとってあまりにも難解な作業であったと思います。
それでも、外を通る救急車の音を聴くと、ピーポーピーポー、と鍵盤で音を出したり、やがてそこにドップラー効果をつけることまで覚え、
踏切の音を再現し、ルパン三世のテーマを弾くと気分に合わせて弾けなくとも自分も速い音を出そうとしたり、
音への感受性は豊かで、「A君のなかにいる音楽が外に出たがっている」という感覚を何度も覚えました。
ドの場所を覚えるまでは半年ほど掛かりましたが、その後は着実に五感の回路が繋がっていき
はじめてのレッスンから2年経った今は、楽譜を見ながら簡単な両手の曲を読んで弾けるようになってきました。
素晴らしい成長です!!
最初からすらすらできてしまう他の子と比較すれば、なんと進度がゆっくりしているのだろう、と思われるでしょう。
けれど、音楽学習の目標は必ずしもコンクールや音大ではないですし、比較は過去の本人と今の本人でより良く進歩したかどうか、で感じてほしいと思っています。
昔、AD/HDの生徒さんを指導したことがありますが、発達障害はひとりひとりの特性がまるで違うため、つねにこちらも臨機応変で柔軟でなければなりません。
常識的な指導では立ち行かないところですが、
私の場合は夫が公共の教育職で、発達に関する情報と経験を数多く持っていることが力強い助けになっています。
そして、ユニークな行動のA君を忍耐強く暖かく見守っていらっしゃるご両親にも、日ごろの音楽教育への深いご協力に感謝して止みません。
さて。
私もストリートピアノに2回参加させていただきました。
1回目は久石譲さんの美しい曲を2曲、2回目はピアソラのリベルタンゴをノリノリで。
特にリベルタンゴは即興のセッションとなり、皆様の手拍子もにぎやかで楽しい時間でした。
カホンでリベルタンゴのリズムを大いに盛り上げてくれた藤小4年生の男の子、
初対面で無茶ぶりしてごめんね。でもとても楽しかったよ、
ありがとうございました!!
ストリートピアノならではの出会いに感謝です!!
音楽が大好きとおっしゃる五大茶屋のオーナー様とお話ししたのですが、
今回の盛況にとても喜んでおられて来年もぜひ開催したいそうです。
上手い人もそうでない人も、子供も大人も、クラシックでもポップスでも、
なんでも気ままに弾いて楽しめる文化は素晴らしい。
桑名にもストリートピアノ文化が根付いて音楽で街が満ち溢れることを願っています。